電子写真技術によるカラー画像形成のしくみ

1.はじめに

 カラーレーザープリンターやカラー複合機は、オフィスなどで広く使われています。これらカラーレーザープリンター、カラー複合機のことを総称してカラー電子写真装置と呼びます。 電子写真技術による画像形成のしくみについては、技術解説「電子写真技術と機能部品」で説明しましたが、カラー電子写真装置も基本的にはモノクロ電子写真技術と同じしくみで印刷を行います。興味のある方は、「電子写真技術と機能部品」の解説記事をご覧ください。ここでは、電子写真技術によってカラー画像が得られるしくみについてやさしく説明したいと思います。

2.フルカラー画像が構成されるしくみ

 カラーレーザープリンター、カラー複合機は、4色のトナーを用いてフルカラー画像を形成します。4色のトナーとはイエロー(YELLOW)マゼンタ(MAGENTA)、シアン(CYAN)、ブラック(BLACK)になります。この4色の組合せでさまざまな色を出していることになります。基本的にはイエロー、マゼンタ、シアンの3色ですべての色を出すことが可能ですが、電子写真装置では文章などモノクロ画像の印刷を行うためにブラックのトナーを加えた4色のトナーを用いるのが一般的です。 図1に3色のトナーによって表現できる色を示しています。 図1では7色しか表せていませんが、それぞれのトナーの付着量を変えることで、すべての色が表現できることになります。

 私たちの目で見ることができる可視光線の波長は、おおよそ380nm~780nmと言われています。私たちは波長の違いを色として認識しています。例えば、青色は440nm~480nm程の波長の光を、赤色は620~750nm程の波長の光を認識していることになります。(図2)

 ここで、3色のトナーの色についてその波長を考えてみたいと思います。図3にイエロー、マゼンタ、シアンの各色の波長を示しました。イエローのトナーは、400~500nmの波長の光が吸収されるので反射される光は500~700nmの波長の光ということになります。私たちは、この500~700nmの波長の光をイエローの色として認識する訳です。同じようにマゼンタのトナーは、500~600nmの波長の光が吸収されるので、私たちは400nm~500nmと600~700nmの波長の光が混ざったものをマゼンタという色で認識する訳です。シアンは600~700nmの波長の光を吸収するので、私たちは400~600nmの波長の光をマゼンタの色として認識します。

 それでは、イエローのトナーとマゼンタのトナーが重なり合ったらどうなるでしょうか? イエローのトナーは400~500nmの波長の光を吸収し、マゼンタのトナーは500~600nmの波長の光を吸収します。そうすると、反射して私たちの目に届く光は600~700nmの光ということになります。この600~700nmの光は赤色なので、イエローとマゼンタのトナーを混ぜると赤色として私たちは認識することになります。他の色も同じようにして3色のトナーを重ねることで作り出されることになります。

3.カラー電子写真装置によるカラー画像の形成

 カラー電子写真装置の構成の一例を図2に示しました。カラー電子写真装置は、4つの感光ドラムと4つのトナーカートリッジを持ちます。図5では、右からイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順になっています。それぞれの感光体上に各色のトナーで画像を形成し、このトナーを中間転写ベルト上に順次移していくことで、中間転写ベルト上に4色のトナーが重ね合わせられます。 中間転写ベルト上に4色重ねられたトナーは、二次転写ロールによって電気的な力で用紙上に一括して転写され、定着部まで運ばれます。定着部でトナーは加熱されて軟化し、さらに圧力がかけられて用紙繊維中に侵入します。定着部を離れた用紙は室温まで冷やされるとトナーも冷却・固化して用紙にトナーが定着されます。

 このようにして、用紙上にフルカラー印刷が行われることになります。

4.まとめ

 今回はカラー電子写真装置によるフルカラー画像形成のしくみについて説明しました。カラー画像形成の基本原理は一緒ですが、色の重ね合わせ方式や定着方式などは各社からさまざまな方式のものが提案、実用化されています。ここで記述した内容は一例ということでご理解いただければ幸いです。また、ここでは分かりやすくするため、グラフなど一部誇張して記述している部分もありますがご容赦願います。