偏光顕微鏡で見る樹脂製品

■フッ素樹脂フィルム

図1 FEP樹脂フィルムの偏光顕微鏡写真

 「炎」ではありません。この写真は、フッ素樹脂の一種であるFEP(Perfluoroethylene propylene copolymer)樹脂フィルムを手で引き伸ばして偏光顕微鏡で撮影したものです。炎のように見えるのは干渉色と言われるもので、光学的に異方性を持つ材料を偏光観察することでこのような画像が得られます。FEP樹脂フィルムを伸ばした際にFEP樹脂に方向性がつき、フィルムの厚さの変化と複合されてこのような発色が観察されるようになります。発色の状態は、樹脂の材質、厚さ、延伸率、延伸方向などで変わります。炎のように見えるのは、たまたまこれらの条件が揃って、フィルムが適度な延伸状態と膜厚分布になったためです。

 途中からフィルムの幅が小さくなっていますが、これはネッキングと呼ばれるもので、樹脂を伸ばした時に均一に伸びずに局部的に伸びて細くなる現象です。

 引き伸ばす前のFEP樹脂フィルムの写真を図2に示しました。

図2 延伸前のFEP素樹脂フィルム

   

■DVD-RWディスク

 下の写真は、DVD-RWディスクの内側を偏光顕微鏡で観察したものです。何故このような色がつくのか理由はよく分かりません。

図3 DVD-RWディスク

 

■処方薬ポリ袋

 下の写真は、薬局で調合される処方薬のポリ袋を偏光顕微鏡で観察したものです。この袋は複数の薬を一包化して、外側をヒートシールしたもので、ヒートシール部を観察しています。 

図4 処方薬ポリ袋

       

■ペットボトル底面

 次の写真は、各種お茶飲料のペットボトル底面の樹脂注入部の偏光顕微鏡写真です。ペットボトルはブロー成形によって製造します。ブロー成形する前に、まず試験管のような形状をしたプリフォームを射出成型によって作成します。プリフォームを加熱して金型に入れ、口の開いている側から空気を入れてプリフォームを膨らませて型に沿わせます。その後、冷やして型から外せば、ペットボトルが出来上がります。下の写真はプリフォームを射出成型した際にできる樹脂の注入口の部分の偏光顕微鏡写真です。注入口は、刃物で切断した跡が明確に見えるものとはっきりしないものがあります。恐らく切断方法や切断条件の違いによるものだと思われます。お茶の銘柄には意味はありませんが、見え方に差があるのは、ペットボトルの形状や厚み、成型条件などが異なるためと考えられます。

図5 おーいお茶
図6 伊右衛門
図7 生茶
図8 綾鷹

 




 

 

 偏光観察についてもっと知りたい人は こちらをどうぞ。→ 簡易デジタル顕微鏡の工夫による工業製品の観察2-偏光観察-